WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』
これは、僕の生きてきた証。
自信をなくして勇気が出なくなったとき『自信って自分を信じること』何回も自分に言い聞かせた。
あれは自分に向けた言葉。旅によって自分の生きる場所を小さいながらに見いだしてきた。
いろんなことがあった。楽しいことだって、受け入れがたいことも。
でも旅は僕を救ってくれた。僕の写真と言葉で大切に、勇気づけられると言ってくれる人がいるなら、
僕はあなたにこころを込めた贈り物をしたいと思います。
WEB STORE『旅写真と僕を支えてくれた言葉たち』(https://tabi-photo.stores.jp/#!/)にて、旅で見つけた宝物のメッセージポストカード、販売中。

2014年4月27日日曜日

怒鳴なり、罵声を浴びせるソムリエ〜それでも僕は彼が好きだった。



学生時代、僕は接客の仕事をしたが、どもってもやりがいを持って仕事をすることができ、自信になった。 

そして、また人と接する仕事をしたいと思うようになっていた。


ホテルでサービスマンの仕事がしたいと、何個か受けた。

面接でめちゃくちゃどもり、うちは接客するんですよ?なんて言われながら、落とされ続けた。

面接何件目かで、履歴書を忘れてしまい面接の15分ぐらいに前にすごくどもりながら、

履歴書を忘れてしまったので、面接の日を改めさせて欲しい

と電話して改めて面接してくれたところが結局採用してくれた。


最初は、格安で回転率重視のいわゆる結婚式ホテルに派遣された。

しかし、すぐに人が足りないと他のホテルに行くことになる。

それが、僕にとってとてもいい経験をさせてくれるきっかけを生んでくれた。

そこはサービスマンは男性のみののフランス料理レストラン。歴史ある有名ホテルのメインダイニングだ。

僕はどもるだけではなく、すごく鈍臭いところもある。

初日に入った時は、婚礼で緊張のあまりお客さんに出すはずのお肉をすぽーんと見事に地面にひっくり返した。

それを見ていたマネージャーは

あーあ、これ一皿5000円するんだぞ。ばかやろう。


まあ、初めてだから仕方ない。そう言って許してくれた。

しかし、その後も何回もいわれた。ネチネチとネタになるくらいに~_~;笑



ここのホテルの人はみんな本当にすばらしいひとばかりだった。すぐにみんながみんな大好きになった。

自分の仕事にプライドと誇りを高く持っているんだと思う。

どもるどもらないは関係ない。お前がどんだけ頑張ってるかを俺は見てる。

そう言って、どもっている僕をすごく可愛かってくれた。


仕事終わりには、

おい、ちょっと来いよ

って言われて

少しだけ高いシャンパンを飲ませてくれた。

どうだ?うまいか?

なんてシャンパンを飲ませてくれて、僕の話を聞こうとしてくれていた。

みんながみんな、仲良く楽しくしてお互いにサービスをしあっている感じとでも言えばいいだろうか。

みんなプロ意識がこの上なく高い。向上心だって、半端ない。

もちろん僕たちアルバイトにだって、絶対に邪険にすることはないし、全部これも素晴らしいサービスをお客様に提供するため、お客様に喜んで欲しい。その点でみんながみんな一致団結していた。


その中でそのレストラン、いやホテルの顔でもあるソムリエ。

彼は常に完璧を求める。

周りのアルバイトからはちょっと付き合いづらい、そんな彼。

知識も、経験も、十分すぎるくらいにある。

だからこそ、他のサービスマンにも完璧を求める。

そもそも噂ではアルバイトを入れること自体、いい顔をしていないようだった。

僕はよく彼に怒鳴られた。

特に、ソムリエだけあり、
ワインの注ぎ方、
グラスの吹き方、
片付けかたひとつどってもそう。

ラップの掛け方だって。

それに、歩き方やトレーの持ち方。


彼の目に付くと、裏に入った途端、

てめーなにやってんだよ。

こうするんだろ!

一通り注意が終わると、
関係ないことまで罵声を浴びせる。

これは僕以外の人でもよく怒鳴られている。鈍臭い僕はなおさら数多く怒鳴られた。


わまりの社員のサービスマンはあそこまで言わなくてもいいのにね。と、同情してくれる。


本当にきつかった。


でも、僕は彼のことを心から尊敬していた。

やっぱり彼もお客様のためというプロ意識が高かった。完璧を求める。



お客様が誕生日だとわかれば、僕らスタッフを呼び、

ピアノの生演奏とともに誕生日ソングを合唱させた。

こっぱずかしかったけど、

お客様が喜んでくれる顔をその場で観れることが、本当に嬉しかったし楽しかった。



僕は彼を、愛情に溢れた人だと思っている。


怒鳴って、きつい言い方しかできないのは、彼の不器用さ、そしてお客様にたいするプロ意識が僕らアルバイトの経験も知識も伴わない僕らのサービスを許せなくしていたのだと思う。

そして、なにより、伝え方はああだけど、僕らのことをよく見てた。

そんなことも知らねーのかよと怒鳴りながらも、関係のないことも罵声を浴びせつつ、いろいろ教えてくれた。

それに、どんな罵声をあびせても吃音のことはばかにしなかった。

たしかにどもって聞こえないと、聞こえないんだよ!もう一回言え!って、怒鳴られたけど。




彼の言葉が、態度が、悔しくてトイレで泣いてしまうこともたまにはあったけど、それでも僕は彼が好きだった。


彼は僕たちを成長させようとしてくれて、あえてそうしている。

僕は今でもそう信じている。






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